炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)
炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)は難病指定されている疾患です。
腹痛・下血(血便)・下痢・熱発・全身倦怠感・肛門痛などの症状を呈し、10代から30代の若年で初回発症することが多い疾患です。潰瘍性大腸炎は安倍総理が1回目の総理就任後に悪化したことで一般の方にも知られるようになりました。
【潰瘍性大腸炎】
どんな病気か
大腸粘膜が炎症を起こしてただれ、びらんや潰瘍を形成します。症状は粘血便ねんけつべん、下痢、腹痛などです。20~30代の若年成人に多く発症しますが、50~60代の人にもみられます。いったんよくなったように見えても、数カ月から数年後に悪化することがあります。
もともと欧米人に多く日本人には少ないと考えられていましたが、最近、日本でも急速に患者数が増えています。
原因は何か
大腸粘膜に対する異常な免疫反応、つまり、体のなかに異常な抗体ができ、これが自分の大腸粘膜を攻撃することなどが原因とされていますが、遺伝的素因や食生活、腸内細菌叢そうの変化などが複雑に絡み合っており、すべてが明らかになっているわけではありません。肉体的、精神的ストレスで悪化することがありますが、原因というよりも誘因と考えられています。
症状の現れ方
血便、粘血便、下痢、腹痛が主な症状です。ひどくなると体重減少や貧血、発熱がみられます。治療によって改善しても数カ月から数年後に再び悪化し、それを繰り返す場合(再燃緩解さいねんかんかい型)や、症状がだらだらとずっと続く場合(慢性持続型)などのタイプに分類されます。
【クローン病】
どんな病気か
小腸、大腸を中心とする消化管に炎症を起こし、びらんや潰瘍を生じる慢性の疾患です。症状は、腹痛、下痢、下血、体重減少、発熱などです。20代に最も多く発症しますが、ほかの年代にもみられます。欧米に多く、日本では比較的少ない疾患ですが、最近患者数が増えています。潰瘍性大腸炎と似ている点も多く、2つをまとめて炎症性腸疾患と呼びます。
原因は何か
遺伝的要因とそれに基づく腸管での異常な免疫反応のためとされていますが、解明されていません。食生活の欧米化によって患者数が増えているといわれ、食物中の物質や微生物が抗原となって異常反応を引き起こすことが、原因のひとつと考えられています。
症状の現れ方
下痢、腹痛、発熱、体重減少、全身倦怠感けんたいかんがよくみられます。血便はあまりはっきりしないこともあり、下痢や下血が軽度の場合、なかなか診断がつかないことがあります。口腔粘膜にアフタ(有痛性小円形潰瘍)や小潰瘍がみられたり、痔、とくに痔瘻じろうや肛門周囲膿瘍のうようといわれる難治性の肛門疾患を合併したりすることがあります。
当院でも「昔から痔で出血するんです。」とか「昔から下痢が多くて、、、、。」と言う症状で受診された方に大腸内視鏡検査を施行して見つかる方が結構おられます。見つかった場合、治療を開始しますが内服治療(飲み薬)で寛解期で経過される方が多いです。無効な場合は5-ASA局所製剤、ステロイドや生物学的製剤(レミケードやヒュミラなど)での治療を行っています。若い患者さんが多いためライフスタイルにも合わせた治療を行いますが、治療効果が最重要ですのでご本人とよく相談して治療方針を決定致します。難病指定の疾患ですが当院には多数の患者さんが来られており症例数の蓄積もあるので安心して受診して頂けます。入院や手術などの治療が必要な場合は当院と医療連携のある 大阪医大病院、阪大病院、兵庫医大病院、藤田胃腸科病院 などにご紹介しています。
また専門家にしか診断困難な炎症性腸疾患に特徴的な肛門病変から見つかることがあります。逆に他院で診断を受けておられる方が肛門病変の治療のために紹介受診されることも多いです。通常の治療と違う治療が必要なこともあります。痔瘻病変に対しては主にシートン法(ドレナージ・シートン)で治療を行います。できるだけ痛くない方法で行います。
主治医の先生とご相談の上で気軽に相談してください。